これは、誰かが拾った手紙……。
《大きな人間へ。
どうせ信じないだろうけど、私たちは身長が10センチしかない。
それに比べて、お前たち人間は私たちより10倍以上も大きい。
それなのに頭が悪い。お前たちを見ると、いつも嫌な気分になる。
だから時々、お前たちを懲らしめる。
例えば、道路に落ちている『岩』。
あれは私たちが協力して仕掛けたんだ。直径5センチもある岩も仕掛けた。
踏んだりすると痛いだろ?
あとは、『花の密』だ。
実はミツバチに頼んで、花から密を隠しとってもらっている。
花から密がとれなくて困ってるだろ?
私たちの大切な食糧をお前たちにはやれん。
それから、『川の水』だ。
私たちは川に潜って汚いものを取り除く。
川の水が光を反射して眩しいだろ?
それが嫌だから川を汚しているんだろ?
あと、『雑草』は抜かないでほしいものだ。
私たちが緑を増やすために種を植えているんだ。
雑草にだって命はある。少しは考えてくれ。
最後に、頼みがある。これだけは聞いてほしい。
夜に空を見上げればわかるけど、
『月』は見えるか?
月は私たちの宝物。神様からいただいたのだ。
だから、それだけは汚さないでもらいたい、お願いだ。
最近濁って見えるのはお前たちのせいだろ。
月の光が眩しいからわざと濁らせてるのか?
お前たち人間ならできるはずだ。私たちの何倍も大きいんだ。
どうか、私たちの宝物を協力して守ってほしい。
ただ、それだけのことだ。
さよなら。
冷たい小人より》
「誰だ?こんな手紙を書いたのは!」
その時、白い花から小さなミツバチが飛びだした。
「頼まれたんです」
と、言い訳をして逃げていくかのように。