葵サンと弘樹
「幼馴染みで、すっごく優しくて明るくて…気付いたら好きになってたの」
今にも消えそうな声で
葵サンは言った。
「でも…桂は…病気でいなくなっちゃったの…ちゃんと…好きって伝えたらよかった…」
その場にしゃがんで、
中庭の花壇に咲いてる
小さな花を眺めた。
「命って儚いですよね……」
花はこんなに
一生懸命生きてるのに
こんなに
小さいんだ。
「あたしは…桂が好きで…他の人なんて見えなくて…」
分かるよ。葵サン。
あたし、今同じ気持ちなんだ。
「弘樹は…桂のことを知ってて…あたしが桂を好きなことも分かってて…気遣ってくれてたんだ…なのに…」
葵サンは、
自分の手を見て
呟いた。
「弘樹の気持ち…考えてあげらんなくて…」
「そんなことないですよ…」
「弘樹があたしを嫌うの、当たり前なんだよ、ね…」
キーンコーンカーンコーン…
「奈緒ちゃんごめんね?授業始まっちゃうまで話して…」
「大丈夫ですよ!それじゃ失礼します」