恋の迷宮?

超ナタデココ  2006-07-03投稿
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「あ!学校だ」
夏美が暗がりの中見えてきた学校を指差す。
それでも2人はゆっくり歩いていく。
相も変わらない沈黙。

途中まで進むと、冬樹は足を止め、自転車を反対方向に向けた。
「家あっちなの?」
夏美の問い。
冬樹は、気まずい――あるいは、バツの悪い表情――を浮かべた。
「あぁ。
 ……よ、よかったじゃねぇか、俺家逆だからなお別れかな」
冬樹は、そう言ってしまうと、自転車に乗ろうとする。
けれど、その行為は耳に響いてきた言葉に遮られる。
「わ…私抜け出せない」
夏美の言葉に、冬樹は視線を彼女の方に向ける。
夏美は多少俯き加減で冬樹の事を見ていた。
いな、見つめていた。
「え?」
「あたし!恋の迷宮から抜け出せないよ!
 冬樹くんとずっとずっと一緒にいたいよ!!」
夏美が叫んでしまうと声をあげて泣きだした。
雨は、相変わらず降り続けてるし、その音は響き続けた。
けれども、彼女の言葉は余すことなく冬樹の耳に届く。
そして、冬樹はそっと夏美を抱きそめた。
「大丈夫さ、恋の迷宮にゴールなんてありやしない。
 ただ、あるのは君を夢の世界に誘う扉さ」
「夢の……世界?」
夏美は震える声で言う。
頷いて見せ、冬樹ははにかんだ笑みを浮かべる。
「そう!さぁ扉をひらいてごらん。」
雨のようにこぼれる涙を、ゴシゴシとぬぐう。
そして、顔を上げ冬樹を見る。
「あ、あれ冬樹くんしか見えないよぉ」
「そう!俺こそが夢の世界さ。」
「ステキ……」

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