3-? 初夏の路
純の生徒が家を訪ねてきたのは夕方の事である。
日が延びたせいか,太陽はまだ顔を見せている。
『純,生徒が見舞いに来たが‥どうする?』
京太郎が純の部屋の襖をガラリと開けた。
純は目覚めた時と同じように横になっている。
『生徒?誰だろう,通して下さい。』
即答した。
『だがお前,大丈夫なのか?体の方は。』
京太郎は出来るだけ純に安静にしていて欲しかった。
ー 再び血など吐いたら,純は死ぬのではないか‥
そう思ったのだ。
だが兄の心配をよそに,
『ええ,大丈夫ですよ。
体も大分軽くなったし,
寝てばかりでちょうど暇していた所ですしね。』
純は,昨夜吐血した病人とは思えぬ明るい声で答えた。
『そう‥か,』
純の声を聞いて京太郎は少し安心したようだ。
そして,玄関で待たせていた生徒を招き入れた。
●○続く○●