叫ぶ人々、何かが崩れる音、悲惨な光景。それらがビデオのようにゆっくりと通り過ぎていく。こんな景色はあの時以来だと、ウィルは思った。
ウィルは、ロザントン事件の情報を手に入れるために、ノイザーとばれずになんとかこの街の警察に就いた。そのうちにロードタウンに昔の亡き故郷のような愛着を抱き、本当の意味での警察官として、毎日働いてきた。街の人はいつも笑顔であいさつし、ウィルを家族のようにしたってくれた。お年寄りは孫と接するように、中年の人は弟と接するように、若者は友達と接するように、ウィルをかわいがってくれていた。
その光景が一気に脳裏に流れる。原型を消し去った街にそれを浮かべても、恐怖に似た絶望がどっと押し寄せた。この街のみんなを守ると真の警察官となり、あの火事の事件では、二度とあんなことをさせないと誓ったはずなのに。
(こんなこと、起こさせない、絶対起こさせないって、起こさせないって…!)
「なんでこんなことになっちゃったの。誰のせいなの。フィオナさんが悪いの?!」
マリアはぶつぶつと言い続けている。
「いや。」
その声は、
「お兄ちゃん?」
少し震えていた。
「俺が悪いんだ。」