タクトとウェドとフラットの三人はこのまま、夜に移動するのかしまいかの議論を重ねていたが、結局進むことは諦め、フラットが焚き火の炎を議論を重ねている間にパールが拾ってきてくれた乾いた草につけた。
だが、火をつけたてもさっきまで眠っていたせいで誰一人眠くなかった。
「思い切ってもう寝ないでおこうか?」
「駄目よ。ちゃんと寝ないと」
パールはマントを掛け布団がわりにして、焚き火から背を向け、寝ようとしていた。それを見習ってかフラットも顔を隠すような体勢で寝る努力をしていた。
「今変な音が聞こえなかったか?」
ウェドは何かを感じ取った様に素早く振り向いた。
「そうかなー?どんな音だった?」
「微かにだが、草が揺れる音だ」
今の草原に心地よい風は無く、不気味な静けさのみがあった。昼間とは全く違う空気がそこにはあった。
「なんだか、嫌な予感がする・・・」
タクトとウェドは自然と武器を構える体制となった。
深い暗闇に包まれた草原で遠くを見透すことは不可能だった。
「どうせ気のせいだ。タクト、剣を下ろせよ」
暗闇に目を凝らしながら促した。
「そっちこそ下ろせばいいだろ。どうせ何も無いさ」
二人はそんな会話をしながらも背中合わせになった。
その間にパールとフラットはすっかり眠ってしまったようだ。
「びびってんじゃねぇよ。さぁ、早く寝るぞ」
「うん。早く寝て明日は早くから出発しよう」
草の擦れる音がした。
タクトとウェドが素早く音の方へと体を向けた。
「何かいる!」
「何が来ても後ろで寝てる女子供には近づけるなよ。このまま眠らせておいてやれ」
暗闇から冷たい印象を与える銀色の体の犬が現れた。
「なんだ?あれ?」
その銀色をした犬は真っ直ぐこちらを威嚇するように睨んできた。同時に口に隙間なくずらりと並んだ鋭い牙も覗かせてきた。牙まで冷たい銀色だ
。
「変わった色をした犬だな」
タクトとウェドと銀色の犬は沈黙の中でどちらも動かない。
しばらくしてから、突然銀色の犬はこちらに向かって走ってきた。
犬はウェドに噛みつこうとしたが、ウェドがハンマーでなんとか弾き返した。
「なんだあいつ!ちゃんと頭に当てたのに俺のハンマーにびくともしねぇぞ!」
犬は弾き飛ばされると、すぐに体制を整え直した。
どうやらただの犬ではなさそうだ。