俺は祐介。
夕食時、母さんと口喧嘩した。
ほんの些細な事で、いつもの事だ。
入浴を済ませ、寝る前のひとときを過ごしていた時だ。
突如、隣の部屋から…
「オェーッ!」
と言う母さんの叫び声が聞こえて来た。
「何だァ? まーた変な声出してから」
と、思いつつ俺は気にも止めなかった。
ところが…
別室でテレビを観ていた親父が風呂場の方へ行った。
するとだ…
「祐介! 祐介!」
何だか親父、慌てている様子だった。
すぐに、風呂場へ行ってみる。
浴室内で目にした光景は…
湯船に浸かったまま、仰向け状態でグッタリしている母さんの姿。
顔中、血だらけで、意識はないようだ。
急いで母さんを引き上げるが、体の重い事!
力を踏ん張って、何とか母さんを床に寝かせる事が出来た。
急いで119番に練習する。
救急車で搬送された先は某大学病院だ。
かなり長い時間、待たされる。
診断の結果、脳内出血と分かった。
そう言えば母さん、血圧が高かったっけ。
先生の説明では…
もう、助からないとの事。
すぐに俺はケータイで親父に連絡した。
「母さん、助からないんだって」
と、俺は状況を話した。
「あ、そうか」
親父の素っ気ない返事である。
冷静と言うか…
母さんの深刻な状況を、別に気にも止めていないって様子だ。
後から兄夫婦が来て再度、先生の説明を聞く。
深刻な状況に兄の表情は暗い。
入院手続きを済ませ、俺は一旦帰宅した。