「あー…だりぃ。」
彼の名前はケースケ。現在ニート。
働きたくないが、お金は欲しいというごく普通のニートである。
今月を最後に親からの仕送りが無くなり、来月からどう生活するか悩んでいる。
「どこかに金落ちてないかなぁ。」
「働きたくないけど金は欲しいんだよな〜。」
毎日そんなことを繰り返し考えている内、月の最後がやって来た。
「家賃、光熱費、食費、携帯代、その他を差し引くと手持ちは2万か。キツイな…。」
「…次のニュースです。川で溺れた少年を助けた男性に、警察から感謝状と金一封が贈呈されました。男性は、無我夢中で飛び込みました。助かって本当に良か…」
「ん?金一封?…これだ。」
「人助けで金一封。まさに、一石二鳥だな。」
次の日からケースケは<働き>始めた。
必死になって人助け(金儲け)をするために。
「まずは、犬からでも探してみるか。」
町を歩いていると大きな門にカラーの紙が貼ってあるのが見えた。
「…ん?<この子を見つけてくださった方に、お礼を差し上げます>か。」
「何がもらえるのかな?豪邸だから悪くはないだろ。」
ケースケは犬の写真を写メで撮り、公園に向かった。
公園にでは数人が犬を散歩させていた。
「あのー、すいません。この犬を見かけませんでしたか?」
「…いや、わかりませんね。…すいません。」
「あなたはどうですか?」
「気のせいかもしれないけど、この先の海で見たような気がするわ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
ケースケは海に向かった。
海の近くにはたくさんのダンボールハウスがあり、ホームレスがいた。
「…オレは、ホームレスにはなりたくない。」
砂浜を端から端まで歩いたが、犬は見つからない。
海はただ広く、綺麗だった。
砂のなかにちりばめられた宝石も、海に負けないように輝いていた。
「…いないな。やっぱり気のせいだったか。」
「あの家から歩いて30分だもんな。こんな遠くにいるわけ無いか。」
「ワンワン!ワンワン!」
「ん?」
…周りを見渡しても、ダンボールハウスと砂浜と海しか見当たらない。
「けっこう近くで聞こえた気がしたんだけどなぁ…」
「おい、静かにしろよ。こんなまずい飯は食べたくないのか?」
1つのダンボールハウスから声が聞こえてきた。
「あのー、すいません。」
「なんだ?オレになんか用か?
みすぼらしい服を着た男が、可愛らしい子犬に餌をやっていた。