奈央と出会えたから。<314>

麻呂  2009-01-30投稿
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『聖人‥‥出て行っちゃった。』



キッ――



あたしは思わずタツヤを睨み付けてしまった。



『な、なんだよ木下。俺は北岡に、“体育祭をスルー出来ていいよな”って言っただけじゃん。』



タツヤは気まずそうな顔で反論してたケド、



あたしは耳を貸さなかった。



だって、聖人に対して言った言葉は、明らかに嫌みにしか聞こえなかったから。


タツヤは、バツが悪そうに、あたし達の前から離れて行った。



『奈央。普段の聖人に何か変わったところはない?!』



『うん‥‥。特に無いケド。』



ユカの言葉に、あたしは何も思い当たる節が無かった。



ケド、



体育祭に参加出来ない程、聖人の心臓が弱いコトは確かで――



『ねぇユカ。あたし、聖人の様子見てくる。』



幸い、この時間は、体育祭の出場メンバーを決定する為に設けられたワケで、



渋川は、決定するまで職員室にいるコトになっていた。



『奈央。聖人、あたし達の前では、絶対弱さを見せないじゃん。

でも、奈央の前ではきっと、素直になれると思うんだ。

聖人のコトを支えてあげられるのは、奈央しかいないんだよ。』



『ユカ‥‥。うん、ありがとう。』



教室を出た。



思い当たる所と言えば、たぶん屋上。



あたしは、屋上に続く階段へと足を運んだ。



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