『聖人‥‥出て行っちゃった。』
キッ――
あたしは思わずタツヤを睨み付けてしまった。
『な、なんだよ木下。俺は北岡に、“体育祭をスルー出来ていいよな”って言っただけじゃん。』
タツヤは気まずそうな顔で反論してたケド、
あたしは耳を貸さなかった。
だって、聖人に対して言った言葉は、明らかに嫌みにしか聞こえなかったから。
タツヤは、バツが悪そうに、あたし達の前から離れて行った。
『奈央。普段の聖人に何か変わったところはない?!』
『うん‥‥。特に無いケド。』
ユカの言葉に、あたしは何も思い当たる節が無かった。
ケド、
体育祭に参加出来ない程、聖人の心臓が弱いコトは確かで――
『ねぇユカ。あたし、聖人の様子見てくる。』
幸い、この時間は、体育祭の出場メンバーを決定する為に設けられたワケで、
渋川は、決定するまで職員室にいるコトになっていた。
『奈央。聖人、あたし達の前では、絶対弱さを見せないじゃん。
でも、奈央の前ではきっと、素直になれると思うんだ。
聖人のコトを支えてあげられるのは、奈央しかいないんだよ。』
『ユカ‥‥。うん、ありがとう。』
教室を出た。
思い当たる所と言えば、たぶん屋上。
あたしは、屋上に続く階段へと足を運んだ。