宝シール

さきざき ひろ  2009-01-30投稿
閲覧数[538] 良い投票[0] 悪い投票[0]

冴えない男がいた。52歳、独身。ただ、一般的には少し大きな家に住んでいた。容姿もそこそこだったがひとつだけ欠点があった。ギャンブルが大好きで女性の事など目に入らなかったから、今まで独身だった。

でも、やはりギャンブル。儲かるはずはない。でもやめられず毎日遊びに出掛けていた。
もちろんそんな生活が出来るのは親の遺した財産があったから…。

でも、定職も無くギャンブル三昧。いつしか財産も残り少なくなってしまった。

だが、今は凄い不況で就職なんて出来ない時代。

…そんな時、国営のギャンブルが出来る事になった。ギャンブルと言っても宝くじの様な物。
この不況で、売っている物全てにシールが付いていて、当たりで一生優雅に暮らせる物だった。
安いとか高い物とか関係無く、全ての商品に平等に…不況のこの時代に国民の購買力を高め景気を盛り返すためだった。

当たりのシールからある電磁波が流され、家庭にセットした機械で受信する。もちろん、その機械も買わないといけなかったが、そんなに高価ではなかったためあっという間に行き渡っていた。

当然の事だった。
日常の買い物の中に当たりがあって、もしかすればもう一生アクセク働かないで生活が出来るのだから。

お店のレジを通り、そこでシールの電磁波が解除になって、家の機械がキャッチする。もちろん、国のしている事だから、保安上も万全。現金を持つといろんな問題が起きる事から、個人自体を登録して…。こんな仕組みを話しても仕方ない。

その男は毎日買い物をした。もちろんガム一個から車、海外旅行…。車などはキーにシールがあった。

毎日家に入るたび、ため息だった。当たる確率を考えたら、天文学的な事だったが…もう20数年経っていた。

一生楽に暮らしたい。

だが、独身で不摂生だったからか70半ばで亡くなってしまった。
自分の好き勝手に生きたのだから思い残す事は無いだろう。

友人達が身寄りも無い男の形見分けとして家にある物を少しずつ別け持ち帰った。
一番の友人は、残り物だったが他の人よりは少し多目になった。

家に帰ったとたん、機械が「おめでとう!」と言った。何回も。
…やがて、国の機関の人や保安の人…様々の人がやって来た。

「おめでとうございます。当選しました!」
「調べた結果、お持ちになっているこの当選判別マシンのシールです。」
私はもう80歳です。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 さきざき ひろ 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ