空と海 ?

内田俊章  2009-01-30投稿
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 菜緒が亡くなって、2ヶ月程経った11月9日、空は6才の誕生日を迎えた。
 その日は、菜緒の両親(武田勝、美菜子)が、菜緒の兄嫁(武田亜希子)と、小学2年の長男(健介)を連れてお祝いにやって来た。
 大きな縫いぐるみのプレゼントをもらい、久し振りに笑顔を見せた空は、健介と遊び始め外へ出て行った。すると、菜緒の母親、美菜子が話を始めた。
 「海人さんも空ちゃんも、元気になったようで、安心しましたよ」
 葬式の後、海人は、放心状態の日々が続いた。それを見かねた菜緒の両親が「少しの間でも、空を預かるよ」と申し出た。その時海人は「これ以上、俺から家族を奪わないでくれ」と言って、空を抱きしめたまま離さなかった。
 海人は、頭をかき、照れながら言った。
 「いやあ、お恥ずかしい。あの時は無我夢中で、俺が空を守らなきゃって、感じで…」 「そうですよね。私だって、主人や健介がいない生活なんて、考えられないわ」と亜希子が言った。
 「姉さんがそう言ってくれると助かるよ。今は、お袋がいてくれるし、仕事の方も落ち着いて来たから、頑張って空を育てますよ!『真っ青な青空の様に、清らかな心の優しい女の子』に。これが菜緒の口癖でしたから」
 すると空と健介が帰って来た。
 「お父さん、健介兄ちゃんね、逆上がりが出来るんだよ!空ももう少しで出来そうなの!」
 「そうか、1年生になるまでに出来たらいいな」海人は空を抱き上げ、膝の上に乗せて言った。
 「空ちゃん、1年生になるの楽しみだね」と、美菜子が言うと「うん。早く勉強がしたいな」と、空は嬉しいそうに答えた。
 「空ちゃん、1年生になったら、お爺ちゃんが好きな物を買ってあげるよ!何が良い?」今度は勝が言った。 空は少し考えてから「机が欲しいな。空ね、うん〜と勉強して、看護婦さんになるの!」と言った。すると海人があわてて言った。
 「ダメだよ、そんな高い物!」すると美菜子が「良いの、良いの海人さん。うちで用意させて!」「でも、机って結構高いですよ!」海人は遠慮した。すると亜希子が「海人さん、買ってもらうと良いわ。お父さんもお母さんも、空ちゃんが可愛いくてしょうがないのよ。甘えたら良いわ」
 今度は富子が、恐縮した様子で言った。
 「申し訳ないわ、そんな高い物」
 「良いんですよ。うちの人は、空ちゃんを連れて買い物に行きたいって、いつも言ってるのよ」

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