恋の滑走路?

超ナタデココ  2006-07-03投稿
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その明希が、どういうわけか更衣中。
一瞬、お互い固まった。
「キャァ!」
晴輝は慌てて部室を出てドアを閉める。
悲鳴を上げたいのはこちらだ、小さく心の中で毒づく。
念のため、ドアの上を見上げる。
そこに掲げられているのは男子陸上の文字。
――決して、俺が入り間違えたんじゃない。
俺は正しい、うん、絶対。
「何で男子部室にいるんだよぉ……」
晴輝は狼狽した声で言う。
急に気分が変動したこと云々で、心臓がバクバクと鳴っている。
いつまでも心臓を太鼓のように叩いている体を落ち着かせるため、深呼吸。
それから、部室のドアに背中を預ける。
特に意味はないが、見る気はないというアピール。
「だってぇ女子部室開いてないもん。」
しょうがないじゃん、といった感じの返事。
「だからって……」
せめて鍵くらいかけて置けよ、と言ってみるも無反応。
更に、お前は本当に女子高生か、と言いかけて口を閉じる。
さすがに言い過ぎると、痛いしっぺ返しがある。
明希の右ストレート恐ろしさは、身をもって理解していた。

「私ぃ、晴輝には別に見られてもいいよ?」
そんな中、唐突に聞こえてきた声。
「えっ、まぢ?」
嗚呼、ようやく、落ち着いたというのに。
けれども、返ってきたのは陽気な笑い声。
「ハハハ、今ドキッとしたでしょ??」
「し…してねぇよ!」
即答してから、晴輝はため息をついた。
キャプテンである自分をからかえるのはこいつくらいだ。
ただ、未だに自分をからかってくれる彼女は、貴重な存在でもあって。
「あれれぇ?ムキになっちゃバレバレだよ。」
未だ、笑っているのかそんな声。
溜息の数だけ寿命が縮むとか言う噂もあるが、今日はどれだけ寿命を縮めてるんだろ
う。
そんなことを考えながら、そっとドアの奥に視線を向ける。
「そんなんじゃねぇよ……ってか、もうそろそろいい?」

「……」

陽気な声が返ってくると思ったが、結果は真逆。
しん、としていて、音が全く返ってこない。
聞き逃したのか、ともう一度声をかけてみる。
「明希、入るぞ?」
無音。
「おい!明希どおした!?」
沈黙。
「明希!」
静寂。
慌てて、晴輝は部室の中に飛び込む。
――何があった?
しかし、見回してみても部室の中には誰も見当たらない。



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