その絵には、真っ赤な炎に包まれ煙のあがる街が描かれていた。気のせいか、まるで今のロードタウンを描きだしたようだ。
「素晴らしい！」
ジニーは両手で絵を持ち上げ、目の前に見えるロードタウンの景色にかざして見た。ジュードは今の現状が理解できないのか、それともそれが本当の気持ちなのか、無表情でその景色を見つめていた。街には白髪のうるさい母親がいる。消防団にいたときに世話になった人たちがいる。昨日知り合ったウィルがいる。そしてなにより、ジュードの思い出が、そこにはある。なのに、なぜだ？ジュードはなにも感じない。
「めずらしい方ですね。何も感じないのですか。自分の故郷でしょう？」
ジニーの目は笑っていた。「さあ。なにも感じないす。あの街が潰れたところで、俺が困ることなんて無いんですよね。」
ジュードはその時初めて気付いた。人は、失ったときその大切さを知るというが、彼の場合まったくの逆なのだ。大切なものなど何一つ無いことを、失って初めて気付いたのだ。
ジニーはにやりとしながら懐から分厚い札束を取出し、優しくジュードに手渡した。
「こんなに…？！」
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