「いいんです。あなたもつらかったんですね。大切なものなどはじめから無い虚しさ、苦しみ。でもそんな気持ちはこれからは解放されるべきです。ですから、これであなたは大切なものを作ってください。」
ジニーは見事にジュードの心情を言い当てた。ジュードはそのとたん、胸が熱くなる。
「俺は絵だけが、命です!失いたくないのはそれだけです!」
絵が描ければいいと、そういうことなのだろう。家族や友人、思い出はどうでもいいのだろうか。
「それでは、私の街へ来ませんか。この絵を見れば誰もがその才能を認めるでしょう。私もまた、高額で買わしていただきますよ。」ジニーのそう言った笑顔が、ジュードには心地よいものだった。
「行きます、ジニーさんの街へ!」
「ボス!大変です!!」
一人の大柄な男が勢いよく部屋のドアを開けた。
部屋にいたのは、いつかの演説で盛り上がったジャズだ。ちょうど着替えている時だったらしく、上半身が裸のままだ。
「ちょ、ちょっとぉ〜!ノックくらいしてよ!」
弱々しく怒鳴るジャズ。はたしてこの青年、ボスなどと呼ばれる立場なのだろうか。