恋の滑走路?

超ナタデココ  2006-07-03投稿
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明希が泣き出す。わっという泣き方ではなく、すすり泣きのようなそれ。
どことなく、感じ取れる。それが本当に哀しい時の泣き方だってこと。
――もし、もし悲しんでる理由が――
あらゆる理由を考えたが、どんな理由を考えても、胸に罪悪感がたまっていく。
深く黒味を帯びた水溜りが、胸へと流れてくる。
「明希は……自分が置いていかれてると…思ってるのか?」
泣いている明希をじっと見つめる。
「……ぅん……晴輝は、走るの…速い…もん………」
途切れ途切れに返ってきた返事。
あぁ、そうか、と晴輝は自分なりに納得する。
そして、そっと顔を明希に近づけ、表情を崩した。
温和な、優しさを帯びたそんな顔。
「ならさ、俺はどこにむかってると思う?」
質問、というより問いかけ。
具体的に違いは自身でもよくわかってないけど、とにかく問いかけ。
「………わかんないよ」
明希の返事には力がない。
既に彼女は視線を下げ、晴輝の顔を見ていなかった。
そっと、彼女の肩に手を置き、更に言葉を続ける。
「実は俺、前から思ってた…………明希のところへいきてぇんだって」
――トマドイ――
そんな言葉が、何よりも良く似合う。
色々な感情が心の中で交錯し、交じり合い、反発する。
でも、そのなかでもしっかりとした湧き上がる感情があって。
戸惑いつつも、さっきまでよりもずっとはっきりと言う。
「ぇ!?…私なんか晴輝のずーっと後ろで立ち止まってるだけ……」
言葉を遮るように、晴輝が明希を抱きしめる。
明希は驚いた表情を作るが、抵抗はしなかった。
「俺にとって明希は………ずっと遠くにいた…
 ゴールよりまだ向こうにいる気がした……憧れだった…。」
そっと、彼女の耳元で晴輝が囁く。
「晴輝…」
明希は晴輝の胸の中で泣き続ける。けれども、その理由は先ほどとは違う。
「高校入ったときのこと覚えてるか?
 あん時、おまえさ『男の子だったらやっぱ全国で1番だよね!!!
 晴輝ならできるって!そしたら私が?1のマネージャーだ!やった』って…」
話してから、へへっと晴輝が苦笑いをしてみせる。
つられるように、明希も苦笑を浮かべた。
「……もぅ…いつの話してんのぉ……」

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