恋の滑走路?

超ナタデココ  2006-07-03投稿
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明希の瞳から絶えることなく涙が零れ落ちていく。
そっと、彼女を抱き締める腕に力を込める。
「だからひたすらゴールを目指した、明希を目指した、誰よりも速く…速く……。
 でもさ…ゴールする度に気付いた、こんぐらいじゃ追いつけねぇまだ先がある、っ
て。
 ……明希にいつも気付かされてた……だから、だから!
 俺が明希に追いつくまで……明希こそ…どこにも行かないでくれ!」
「………ぅん………待ってる、絶対だからね…
 でも走ってるときは晴輝一人じゃないよ!
 私もいる!みんなもいる!私の心はいつでも晴輝に預ける」
明希はポロポロと流れていく涙をぬぐいながら顔を上げた。
「…男だからさ死ぬまで…いや…死んでも約束は守らなきゃいけねぇ…。
 だから俺は誓いをたてる!俺の前には誰も走らせねぇ!1番に明希を迎えにいって
やる!」
「ゴールしたら………………………そのときは…手ぇつないで一緒に走ろ!
 …今度こそは握り締めて離さないんだから!!」
絶対に、小さく呟く。
それから決意を胸に押し込むように、頷いた。
明希はじっと晴輝の顔を見つめる。笑っている、彼が目に入ってくる。
「あぁ、明希は誰にも渡さねぇ!」
「ぅん、晴輝は私のもの!」

数週間後――
「男子200メートル準決勝5組の選手を紹介します、第1レーン、1217番、幹元 晴輝君、黒崎高校。」
全国大会の会場で、彼の名前が高らかに呼び上げられる。
彼は、本部席に一礼をして、スタートラインにたった。
わっと、観客席から歓声が上がる。その席の一つに、彼女はいた。
「晴輝頑張れぇっ!!」
声が届いたのかどうかは定かではないが、彼は確かに彼女の方を向いた。
後の談ではあるが、このとき二人は確かに目を合わせたらしい。
――位置について
心臓が、鼓動する。
――ヨーイ…
バンッ、と号砲が響き、各選手が一斉に走り出す。
陸上を始めたあの日と同じ、なんら変わらぬ号砲を聞きながら、彼はしっかりと見据
えていた。
ゴールと、その先にいる彼女の姿を。

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