合宿が終わり、もう季節は梅雨。
私とマサノブ君の距離は…相変わらず「学校一のほのぼのカップル」のままだ。
受験生ということもあって私は毎日塾通い。マサノブ君がたまに「今日、一緒に帰れる?」と言ってくれるけど、ゆっくり帰ってると塾に間に合わない。
せっかく二人で帰るのに急ぎ足で帰ってはマサノブ君に申し訳ないと思って断ってる。
放課後、一人で校門へ向かっているとグランドで部活しているマサノブ君を見つけた。
すごく楽しそうにサッカーをして他の男子と話してる。
「最近、あんなマサノブ君の顔見てないかも…。」
ちゃんと付き合っているのにマサノブ君がすごく遠く感じた。
「月原さん」
突然声をかけられ後ろを向くと、安田さんが立っていた。
「月原さんさー、本当に平井君のこと好きなの?」
いきなり質問され、私が答えられずにいると
「私、月原さんと平井君が付き合う前、二人が話してるとこ見たことないんだけど。前からちゃんと好きだったの?」
私は返答に困った。付き合う前までマサノブ君のこと何も知らなかった。「マサノブ君が好きだ」と確信したのは付き合った後だ。
「あれ?何してんの?」
マサノブ君の声がフェンスの向こうから聞こえた。
私はマサノブ君の顔を直視できなかった。
「好き」という気持ちと後ろめたい気持ちが交ざり合って心臓が破裂しそうだ。
「私、塾あるから…」
そう言って走り去ることしかできなかった。