屋上のドアを開けると、
心地よい風が勢いよく、あたしの前を通り過ぎて行った。
まだ6月に入ったばかり。
北海道の夏は、まだまだ遠い。
ミズホさんとサトル君が、この春に卒業してからは、
聖人は、よく屋上へ行っていた。
『聖人。』
そこには、
頭の後ろで手を組んで、仰向けに寝ている聖人の姿があった。
『おぅ。奈央もこっち来いよ。
風がすげぇ気持ちいいぜ。』
あたしの姿に気付いた聖人は、笑顔でこちらを見ている。
『うん。今行くっっ。』
あたしは聖人の側まで駆け寄ると、その場にゆっくりと腰を下ろした。
『ピンクの水玉模様。』
『えっっ?!』
『ぱ・ん・つ。』
『ば、ばかっっ!!何言ってんのっっ/////』
心配してたのに。
聖人の様子が変だったから。
でも、
いつも通りの聖人だ。
よかった。
『奈央も寝そべってみろよ。』
『う、うん。』
ひゃあっっ/////
聖人に寄り添うカタチで、
あたしは、言われるがまま寝そべってみた。
ドキッ――
『ホントだ。風が気持ちいい‥‥。』
『だろ?!ここって用務員のオヤジが、夕方、鍵を掛けに来るトキ以外に誰も来ねぇじゃん?!
だから、寝るには最高の場所だぜ。』
『あはは。そうだね。』
こんな穴場スポットがあったなんて。
全然気付かなかった。
『ところで奈央、出る種目は決まったの?!』
『ううん。まだそんなの決まってないよ。だって、あたし、教室を抜け出して来たんだもん。』
『大丈夫かよ?!
変な種目、押し付けられんなよ?!』
『あはっっ。あたしの代わりに、ユカがくじ引いてくれてるから大丈夫。』
『マジ?!でも、くじ引きなら何が当たるか分かんねぇじゃん。』
『それは、そうだけど。』
『ま、頑張れよ。俺は出れねーケドよ。』
『うん。ありがと。』
ふと見た、すぐ横のあなたの表情が、
とても悲しそうに見えた。