『俺さ、小さい頃、すげぇ泣き虫でさ。』
『あはっ。そうだったんだ?!』
『一緒に入院してた、俺と同い年の女のコが、ある日手術を目前にして死んじゃったんだ。』
『うん。』
『俺、すげぇショックでさ、毎日泣いてばかりいた。
でも、毎日毎日泣いてたら、ある日親父に“男は強くならなきゃ駄目だ”って言われてさ。
俺が毎日泣いてばかりいたら、その死んじまった女のコが、安心して天国へ行けないって。
そう言われて、その日から俺は心に決めたんだ。
もう泣かない。強くなるんだって。』
『うん。』
『それからは、“死”に対しての恐怖心が、俺から消えた。
俺もいつかは、あのコと同じ様に死ぬんだって、
どこか開き直って生きてきた。』
『うん。』
『でも、今は違う。
自分の体を大事にしなきゃって思うようになった。
そうじゃないとさ――』
『うん。』
『オマエのコト、守れねーじゃん。』
あなたのその言葉に、
胸がキュンと痛くなった。
今のあなたの姿からは、
とても想像出来なかったよ。
それほどまで、
あなたは強くて、
カッコよくて、
頼りがいがあって、
いつだって、
ヒーローだったよね――
『やべー。俺何しんみり語ってんだろな?!ごめん奈央。
そろそろ教室戻ろうぜ。』
『あたし、今の聖人の小さい頃の話、聞けてよかったよ。
聖人のコト、またひとつ知るコトが出来て、凄く嬉しいもん。』
屋上から出るトキ、
聖人は、優しくあたしの手を引いてくれた。
そして、
『教室へ戻る前に♪』
『/////』
どんな言葉よりも、
何よりも、
安心するんだ――
甘いキスをされる瞬間が。
すごく幸せって思える、
この瞬間が。
ねぇ聖人。
あたし達、
これからも、
ずっと一緒に歩いて行けるよね?!
まだ、
始まったばかりの、
長い長いこの道を。
あなたとともに――