奈央と出会えたから。<316>

麻呂  2009-02-01投稿
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『俺さ、小さい頃、すげぇ泣き虫でさ。』



『あはっ。そうだったんだ?!』



『一緒に入院してた、俺と同い年の女のコが、ある日手術を目前にして死んじゃったんだ。』



『うん。』



『俺、すげぇショックでさ、毎日泣いてばかりいた。

でも、毎日毎日泣いてたら、ある日親父に“男は強くならなきゃ駄目だ”って言われてさ。

俺が毎日泣いてばかりいたら、その死んじまった女のコが、安心して天国へ行けないって。

そう言われて、その日から俺は心に決めたんだ。

もう泣かない。強くなるんだって。』



『うん。』



『それからは、“死”に対しての恐怖心が、俺から消えた。
俺もいつかは、あのコと同じ様に死ぬんだって、

どこか開き直って生きてきた。』



『うん。』



『でも、今は違う。
自分の体を大事にしなきゃって思うようになった。

そうじゃないとさ――』



『うん。』



『オマエのコト、守れねーじゃん。』



あなたのその言葉に、



胸がキュンと痛くなった。



今のあなたの姿からは、



とても想像出来なかったよ。



それほどまで、



あなたは強くて、



カッコよくて、



頼りがいがあって、


いつだって、



ヒーローだったよね――





『やべー。俺何しんみり語ってんだろな?!ごめん奈央。

そろそろ教室戻ろうぜ。』



『あたし、今の聖人の小さい頃の話、聞けてよかったよ。

聖人のコト、またひとつ知るコトが出来て、凄く嬉しいもん。』



屋上から出るトキ、


聖人は、優しくあたしの手を引いてくれた。



そして、



『教室へ戻る前に♪』



『/////』





どんな言葉よりも、


何よりも、



安心するんだ――



甘いキスをされる瞬間が。



すごく幸せって思える、



この瞬間が。



ねぇ聖人。



あたし達、



これからも、



ずっと一緒に歩いて行けるよね?!



まだ、



始まったばかりの、


長い長いこの道を。




あなたとともに――



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