「オラ!ねーちゃん、いるのは分かってんだ、金払えコラッ!」
「あんだって?良く聞こえなかったからもう一遍言ってみ」
「ウギャアアアアァッ!」
必殺のサブミッションを食らった男は、私の下で凄絶な悲鳴をあげていた。
貧乏人から金を取り立てようとする様なやからは、取り敢えず撃退するのが私のポリシーである。
あたしはカイエ小田。
売れない漫画家である。
趣味は酒と格闘技。…ついでに編み物。
185?の巨体に、ボサボサの髪と『寝不足で二日酔いのべートーベン』じみた容貌が災いして、男運がまるでない。
そんなある日、借金取りの兄ちゃんが一人の男を連れてやってきた。
「今日はその… 別の用件でして、ハイ」
「あなた、プロになってみませんか?」
「へ?プロだって??」
「なめてんじゃねェぞコラッ!」
「いたたたっ!馬鹿、あんた手加減してよ」
「あ、ゴメン…」
対戦相手に小声で詫びた後も容赦なく関節を絞り上げる。
リング上でスポットライトを浴びた、悪役レスラー〈ビッグバン・カイエ〉となった私。
ようやく見つかった自分の道に、ちょっと違う様な思いながら満足していた。
但し、男運が無いのは相変わらずだ……