5-? 初秋の桜
季節はもう,秋の香りがしていた。
純は死への道を一歩一歩歩んでいる。
体調の悪い日が増えた。
今日の様に外へ出たのは何日ぶりであろうか。
寝てばかりの純1人では足元がふらつくので,粋乃が純の体を支えた。
2人は,
吸い寄せられる様に出会うきっかけとなった桜並木の墓へ向かった。
時が経つことに逆らうように,墓はその場所にあった。
長い間放置されていたにも関わらず,きちんと整えられている。
多分,粋乃であろう。
と,純は思った。
『ここで初めて粋乃さんと出会った‥。懐かしいです。』
純は墓の前に腰を下ろし呟いた。
時が経つのは早い。
少し前までは,自分が粋乃と行動を共にするなど考えもしなかった。
『私が7歳の頃,近所の屋敷に,ある兄弟が引っ越して来たんです。』
粋乃は思い出した様に話し出した。
『新しい友達が出来るとおもって,遊びに行ったんです。でも,ちょうどその日の前日に‥。』
粋乃は言うのを少しためらった。
○●続く●○