『とにかく2人とも頑張れよッ。
俺、出れねーケド、応援だけしとくからよ。』
どこか無責任な、その言い方は、いかにも聖人らしいとは思ったケド、
聖人が言う様に、とにかく頑張るしかないのかもって思った。
当日の朝は――
絶好の体育祭日和だった。
聖人は、体育祭に参加しないから、
この日は学校を休むって言ってた。
聖人。
応援に来てくれないのかなぁ。
『本日は、PTA会長、秋田谷様をはじめ、多数のご来賓の方々にご来校いただき、ありがとうございます。
高いところからでは、ございますが御礼申し上げます――』
開会式は、校長の挨拶から始まった。
あたし達の中学校では、6クラス縦割り6団対抗戦で、
赤、黄、青、緑、ピンク、白で色分けされている。
あたしのクラスは赤。
1チームに1年から3年まで入っているから、チームの結束力が要求されるんだ。
『奈央〜。“騎馬戦”何時からだっけ?!』
ユカが不安そうな声であたしに聞く。
『“騎馬戦”は午前中だね。
でも大丈夫だよ。騎手はみんな女の子だし。』
本当は人の心配してる余裕なんて、あたしには無かった。
運動音痴のあたしにとっては、口から心臓が飛び出しそうなほど、緊張してたから。
“キャーッッ☆”
“キャー!!
先ぱぁ〜いっっ♪
各チームの、“3年生の応援団長”目当ての女子の黄色い声が飛び交う中、
各団それぞれの応援合戦が始まった。
6チームあるから、結構時間がかかる。
『ユカ。あたしも緊張して来た。
“スウェーデンリレー”って始まる時間早いじゃん。』
『“騎馬戦”のあとだよ、奈央。』
『本当に?!じゃあお昼くらいかぁ。』
聖人。
今頃何してるのかな。
もしかして、
まだ寝てるかな。
結構、お昼寝好きみたいだしッ。
それとも外出してるかもね。
体育祭のプログラムは順調に進んで行き、
全員参加の玉入れと綱引きも、
思いのほか盛り上がった。
聖人と一緒に参加出来たら、
もっと、
楽しかっただろうな――
そんなコトを考えながら、
あたしは自分の出番を待った。