『恋が叶わないことはとても辛いことだと思うんだ。』
彼女を抱きしめながら僕は言った。
『恋心が薄れてしまうことは悲しいけど、恋が叶わないことの方がもっと悲しいと思うよ。恋をするってことはその人と必ず結ばれたいと思う気持ちがあるからだよ』
僕の口からこんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
『わ…私、好きな人とはうまく話すことが出来なかったんだ。だけど…今のままじゃダメだって思ったの。私の友達がそう…思わせてくれたの。私のことを応援してくれる友達が…。』
彼女の声は震えていた。抱きしめながら彼女の目を見た。瞳の中に僕の顔が映っている。そして顔を近づけ、彼女の唇に自分の唇を重ね合わせた。彼女の唇はとても柔らかかった。
『ごめんね、泣いちゃった。』
席に座りながら彼女は言った。
『泣きたいときは泣いた方が良いよ』
ちょっとクサいかな、と思った。
『実は、透君が私の手伝いをしてくれていたんだ。カラオケや海に翔太君を誘ってくれたり、フォローしてくれたり』
そうだったのか、と思った。