そこまで考えて、リグラは大きく首を横に振った。
「五人を一気にターンできる騎士は、今ここにはいませんよ」
「…ルーク」
ルークは紅茶を飲みながら、落ち着いた表情でリグラを見ていた。
「出来るとなれば、ラト様かエリック様でしょうが…両人共この城にはいません。それに、仮に誰かが使ったとしても、魔力の消耗が激しく、その後の行動に支障が出るのは確実です」
「…確かにの。ならば、どのような方法で外へ出たと考える?」
「見当がつきません」
ルークは静かに首を横に振って、窓の外に目をやった。
「…ただ、一つ奇妙な事を兵士が話していたのです。それによると、三人が保護された日の夜に、保護した中の一人…ロイ君が城の廊下を歩いていたのだそうです」
「何?」
「その兵士がどうしたのかと尋ねると、トイレへ行く、と答えて去って行ったそうです。所が、少ししてその兵士がトイレへ立ち寄った時、ロイ君はいなかったと…」
「…」
リグラは厳しい表情になって、ルークを見た。
「あくまで私の考えですが…ロイ君はその時に何者かとどこかで会っていたのではないかと…」
「何者か…とは?」
「彼等をターンでどこかへと運んだ者…です」