アル達三人は無事基地まで帰還した。
だがアルには一つ気がかりな事があった。
ニキの様子がいつもと違う、そんな気がしたからだ。
返答も遅いうえに戦闘機の操縦もフラフラしておぼつかない。なんとか着陸は成功させたがニキは機体から降りるとそのままへたり込んでしまった。
アルはニキのもとに駆け寄ると声をかけた。
「もしかしてびびって腰が抜けたのか?」
冗談まじりで言ったつもりだったがその言葉は少し軽率だった。
「うるさい!」
ニキはそう言うとヨロヨロとよろけながら立ち上がり基地内へ行ってしまった。
理由は聞かなくても分かった。ニキは恐怖していたのだ。
この場合気を利かせて慰めの言葉をかけてやるべきなのだろうが…、そんなことより一番問題なのは軍人であるニキが実戦の恐怖のせいで少なからず任務に支障を来していたことだった。
「彼女はもうダメかもしれないな」
またあの声だ。さっきも聞いた声。
「ミカミ…いったい何がダメなんだ?」
理由は分かっているつもりだったが素直にハイとは言いたくなかった。
「もう二度と実戦には出れないかもな」
答えになってないそのセリフは「分かってるだろ」と言っているような、それに妙に説得力があった。