振り向くとそこには澄んだ瞳でフォーを見つめ佇むシーラがいた。
「シーラ!もう大丈夫なのか?」
「ええ。」
いつも通りの笑顔でシーラがそう返事をした。
「私も、いつまでも寝てる場合じゃないようだし。」
「それよりも…シーラ。
核心の部分…ってのは…、何なんだ…?」
未だ激しい頭痛と闘いながらフォーは途切れ途切れに尋ねる。
「貴方の記憶に隠された、もう一つの記憶。」
「どういう…意味だ…?」
「…貴方の、ご家族のことよ。」
シーラがそう告げるとフォーの脳内に様々な記憶が甦ってきた。
「う……
うわあぁぁあぁああ!!!」
フォーは今度はさっきよりも激しく、喉が潰れるのではないかと思うほど絶叫した。
その声の大きさに雪はびくりと肩を震わせたが、シーラはその様子を、ただ黙って見ていた。
憐れむように、
祈るように、
見届けるように、
ただ、黙って
その様子を見ていた。
「く…はぁはぁ…
思い…出した…よ
ちゃんと、全部……」
絶叫をやめたフォーが疲れきった声で言った。
その瞳は不安定に揺れている。
「…そう。」
優しい声で、小さくシーラが言った。
直後、フォーはガックリと崩れ落ち意識を失った。
「私は…
私たちは、フォーがこの記憶を持っている事で、彼が壊れてしまうと思ったの。彼にとって、あの記憶は固く蓋をしておきたいものだもの。」
だからこそ、シーラとレミスは『契約』を交わしたのだ。