銀河元号一五八二年に勃発した第四次恒星間大戦は、それまでの戦争とは比べ物にならない規模の災厄を人類と宇宙文明にもたらす事になった。
それは、開発された一連の主要兵器群を見れば、一目瞭然と言えた。
今まで禁じられていた大量破壊兵器の開発及び実戦配備に、どの大国も狂奔したからだ。
まず反物質反応弾が出現した。
その余りの破壊力ゆえ、本来の用途たる恒星間宇宙船の推進システムの候補から外された《じゃじゃ馬》が、宇宙時代の核兵器として凶々しく生まれ代わったのだ。
銀河元号一五八四年―最初に使用された反物質反応弾《ファービー》と《ウラノス》とは、たった二発で一六八00隻の艦隊と二八0万以上の人命を、一瞬にして蒸発させてしまった。
だが、まだこれは序の口だ。
当然、と言うべきか、今度は反物質融合弾がおどろおどろしい産声を上げた。
宇宙時代の水爆《マルスの壺》は、一発で先より一桁多い十万隻を消滅させるに至り、全銀河を震え上がらせた。
しかし、これで終わりではなかった。
最終戦争論―《聖戦思想》が唱えられたのは、こう言った大量破壊兵器群の実用化が重大な背景を成している。
この思想の第一人者・戦史学者のネスティは、その著作で概略次の様に、自らの考えを説明している―\r
【則ち聖書等で説かれるハルマゲドンとは地球時代の第三次大戦―テクノ=クライシスを指していたのでは無かったのだ。
太古の預言者達が語っていたのは遥か未来―則ち我々の生きる宇宙時代をしっかりと見据えて警告と希望を残したのだ。
故に今次大戦こそ真のハルマゲドンである。
我々は今やハルマゲドンを避ける事は出来ない。
我々に出来る事はこの最終戦争を戦い抜き真の終焉を迎えるのみである。
またこの戦いを経ずして我々人類は《至福千年王国》を迎える事が出来ない。
至福千年王国とは何か?―戦争も欠乏も無い永久に続く真の繁栄と平和である―\r
それを迎える為にはどんな事をしてでもこのハルマゲドンを終わらさねばならない。
その為にはどんな手段も兵器も赦されるのだ。
何故ならそれは《世界の終り》を指すのだから―\r
倫理や道徳・宗教的禁忌の様な今までのしがらみは全てぶち壊せ!
そして全てが終わるまで闘い・奪い・焼き払い・殺し尽せ!
それのみがこの悲惨な聖戦を終わらす唯一の手段なのである―】