「あらあら、ダメじゃないの、弟を一人にしてちゃ。」
クリスはわざとゆっくりした口調で言った。
「ケ、ケヴィン…!」
恐怖でマリアは動けなくなった。声もまともに出ず、すぐに裏返ってしまう。
「その子を放せ!」
ウィルも恐怖していた。いつまたあの音が襲ってくるかわからないからだ。だが幸いなことに、今はクリスの羽は休んでいる。
「放せ?だったら始めから捕まえないわ。この坊や、とっても愛らしいわ。………殺したくなるくらいね。」
ゾクリ
マリアとウィルの背中に悪寒が走った。
「う、…」
ケヴィンがうっすらと目をあける。
「あら起きたの?ちょうどいいわ。意識がはっきりしてるほうがおもしろいもの。」
クリスはケヴィンの頭を左手でつかむと、軽々と持ち上げた。
「い、痛いよ…。首が…。」
ふつふつと胸の奥から沸き上がる怒りがウィルを突き上げる。
「放せっつってんだろーがあああっ!!」
ウィルはこぶしを握り締めてクリスの方へ走りだした。瞳を真っ赤に染めて。
それを見たクリスはにやりと笑った。