クリスの左手にはまだ、気を失いそうなケヴィンが握られている。
「ホント、人間って単純。弱いものや仲間を人質にとられるとなぜ自分を失うのかしら。死なせたくない?どうして死を恐れるの?死ねばいいじゃない。死んでみんな楽になればいい。どうせ死ぬんだから。」
クリスはケヴィンを見つめながらつぶやくように言った。
(なに言ってんだこいつ…)
「あの世?天国?地獄?そんなもの知ったこっちゃないわ。でもね、たった一つ言えるのは、」
クリスは左手をぐっと握り締めて右手を振り上げた。
「…!やめろ!!!!!」「ケヴィン!!!??」
ゴキゴキブシャッ
「っああああああああっ!!!!!!!!!!」
ケヴィンの左腕が、マリアの足元に落ちた。
「この世は地獄と言うことよ。」
クリスの唇から牙がかいま見えた。