奴らの追っ手は来ないだろう。
携帯を破壊せずとも、即逃走すれば良かったが、奴らには車に傷を付けられたからな。
携帯代と車の修理代は明らかに、後者が高額で、この程度で別にバチも当たらないだろうとの判断だ。
おかげでいくらか気が晴れた。
目的地には2時間で到着した。
俺たちは高層ビルが建ち並ぶ、
『イルディカ』という街に来ていた。
俺たちは車を停車し、アタッシュケースを持ち、ある高層ビルに向かう。
ドアを開いて歩いていき、俺は受付の女に話しかける。
『ナカムラに会いたいのだが?』
美人な茶髪の受付はそっけない返答をした。
『残念ながら、ナカムラは現在不在です。』
即座に俺が言う。
『依頼の件だ。依頼コードはAC2、その件が片付いた。俺達は…』
後を発しようとしたオレを遮るように横にいた銀髪の男が喋り出す。
『グレイと金色低能馬鹿が来たと伝えろ。』
そう、銀髪に整った顔立ち、185cmで、オレをけなす事のみに脳を使うコイツはグレイという。俺の仕事上の相棒だ。
オレは負けじと喋る。
『前言は撤回だ。ギルアと銀髪蛆虫人が来たと伝えてくれ。』
オレの名はギルア。
金髪にグレイ程ではないが美形。身長は182cm。といった所だ…
オレ達の争いを無視し、受付は話をまとめる。
『グレイさんにギルアさんですね。早急にナカムラとの面会を手配します。』
見事なまでの対応だった。『ナカムラは12Fにおります。』
受付が答えた。
頷き、俺たちはエレベーターに乗り込む。
12のボタンを押してから、オレが会話を切り出す。
『手筈は解ってるな?』
グレイは鼻で笑った。
『愚問だな。お前は自分の心配をしていろ。大変だろうが、常人の3分の1しかない脳を振り絞って、必死に手筈を覚えろ。』
そんなこんなで、エレベーターが12Fに付き、扉が開く。
そこは何か豪勢な部屋のような雰囲気が漂っていた。
3人の黒の背広を来た男が立っており、その前に悠然と座る男がいた。
その男は裏世界のいくつかの派閥の1つ<白琉会>の頂点に立つ男、ナカムラ・オキツグである。
下の会社は、彼の隠れ家のためにあるような物だ。
今回俺たちは物資の奪還を依頼された。
しかし、俺たちはこの達成報酬だけでは満足できない。
普通ならば充分すぎる額だが。
主に何故か大量にある借金のせいだ。
そう、今からコイツらをゆするのだ。
大組織を敵に回しても金が欲しいのだ。