別れ
「美貴は…」
「…まだよ」
「そうですか…」
「奈緒…」
「ごめんね、皆」
「大丈夫だよ」
ガラッ―\r
「先生!!」
手術室から出て来た医師に、美貴のお母さんはすがりつくように近付いた。
「美貴は…?」
「すいません…私どもは精一杯やりましたが…」
「いやぁぁぁあ!!!」
美貴のお母さんは、その場で悲鳴をあげて泣き崩れた。
あたしは、持っていた鞄を落としてしまった。
涙でどんどん視界がかすむ。
「美貴…ごめんね…」
助けてあげられなくて、ごめんね。
もぅ涙しか出ないよ。
美貴に、頼ってばかりだったね。
あたしに頼って欲しかったよ。
美貴と一緒に遊んだこと、美貴と勉強したこと、絶対忘れないよ。
美貴。ありがとう。
ありがとう…。
こんなに人を失うのが、辛いなんて思わなかったよ。
まさか一番の友達がいなくなるなんて、ね。
「ねぇ、奈緒」
「何?」
「あそこに弘樹クンいるよ?」
「……」
「…奈緒、」
「ごめん、梨奈。」
「ん、ばいばい」
「…別れる?」
「え…」
「奈緒が俺のこと、信じられないんなら別れよ…?」
かすれた声が、大好きなんだって言えばよかったんだ。
「ごめんね…弘樹」
「俺さ、葵と付き合うことにした」