真っ暗な闇。
上も下もない無限の空間。
かすかに感じるのは孤独。
何も無い。
喜びも悲しみも。
「フィ……ナさ……!!」
(今のはなに?)
何も聞こえぬはずの世界に響く音。
「フィオナさん…!!!」
(音じゃない、これはどこかで聴いた声…)
自分の存在すら忘れていた闇に、浮かび上がる小さな意識。
(ウィルさん…?!)
出口などないはずの空間に少しずつ光が差し込んだ。
「フィオナさん!!!!」
(ウィルさんだ!)
初めてだ。
誰かの声がこんなに嬉しいのは。
(ウィルさん!ウィルさん!!!私、私…!!!!)
光にあてられ見えてくる残像。
そして、自分とは別の、
心。
(やめてよ、やめて!!もう死はたくさん!!!!)
闇を照らす光は、あたかも天からの救いのようで
それは苦しい現実の入り口となっているだけだった。
それでもフィオナは手をのばした。
苦痛の光が照らす、
現実の世界へと。
「フィオナさん!!!」
一か八かの賭けで名前を呼び続ける。