ヴェンジ…警察をしていたウィルが知らないはずはなかった。ノイザーが集う危険な組織として植え付けられているのだ。もちろん、ウィルはそのフリをしてきただけなのだが。
「そして、僕はその組織のボス、ジャズ・ケマルだ。」
(ジャズ・ケマル…このきゃしゃな青年がこの組織のボス…)
「ボス〜、この女どうします〜?気絶してるだけみたいなんですけど…。」
「車に乗せといて。油断は禁物だよ。」
ジャズは指を車に向けたあと、ウィルのほうを見つめた。
「あなたの名前を教えて下さい。」
「俺は…ウィル・フォード。ノイザーだ。」
警察ということは、あえて言わなかった。
「ウィル…。ここでなにがあったのか詳しく教えて下さい。僕達はロザントン事件の犯人を突き止めたいんだ。協力お願いします。」唇を噛み締め言うその瞳は、子供のように純真だった。ボスという威厳など、一つも感じられないくらい。
ウィルは話した。
ある条件と引き替えに。
それはとてもシンプルなものだ。この街の救済活動の援助と、マリアとケヴィンとウィルを一時ヴェンジに入れること。
ジャズは笑顔で引き受けた。