一本の映画を見終わった。
少年が音楽で、離ればなれになった親を探すという感動的な映画だった。
柄にもなく、ちょっとしんみりとした気分で余韻に浸る。
そんな気分も一瞬にして都会のノイズでかき消された。
いつまで、こんな生活をしているんだろう。
映画の少年のように、自分にも何か特技があればと、ちょっと主人公を妬んだ。
自分を変えたい。
常に思ってはいるけれど、何から変えればいいのかがわからない。
そんなこんなで早2年、バイトと映画と睡眠のサイクルを繰り返している。
必死に勉強して入った大学も辞めてしまった。
それと同時に弁護士の夢も消え去った。
今の俺は世間でいうフリーターだ。
フリーターになってから親ともまともに会話した記憶がない。
同じ家に居ながらも他人のようだ。
親父もお袋も、時々帰ってくるだけで、それぞれ好きな事をしてるらしい。
俺が大学を辞めてから、両親は俺に興味を持たなくなった。
当初は束縛から解放された気分だったんだが、ここまで無関心だと、自分の出生に不安になる。
そんな事を考えながら寝るのが、最近の日課だ。