高井戸日記―?
桜の蕾が風に揺れている。その下には神田川がそよそよと流れる。
「おやぁ、雫ちゃんじゃないか。 そっちの嬢ちゃんは?」
橋の上にはおじさんが立っていた。
第三話 優しい笑顔(その2)
「こんにちは、森さん。こちらは里香ちゃん。昨日…
「初めまして、清水里香です!」
雫の紹介が終わるより先に、里香は元気よく挨拶した。と言うかフライングした。
「おぉ、元気いいのぅ。ワシは森。そこの商店街で八百屋やっとるよ。と言っても今は大体息子がやっとるがね。」
おじさんはニッカリ笑っていた。
「里香ちゃん、森さんは毎年春になるとよくこの川を見にくるの。」
「あぁ。おかげで近所のモンからは『春じい』とか呼ばれるよ。ワシは今60後半じゃ。ずっと神田を見続けた。そして特に春のが好きなんよ。ここの桜の美しさは変わらん。…ずっと見続けてきた。なんかしらは呼ばれるわな。」
さやさや と春の風が桜の枝を鳴らさせた。
「ここは…」
「うん?」
「この川と桜はずっと森さんに見守られてきたんですね。」
里香は川と桜の枝を見ながら言う。
「あぁ。見守ってきた。でも…ワシがこの川と桜を見守ってきたのは…これらがずーっと町の人々を見守ってくれてたからなんさ。」
おじさんは少ししみじみとしていた。
「そして、これからも見守ってくれる。ワシはその恩返しみたいなもんよ。」
おじさんはしみじみとしつつなんだか嬉しそうに話ていた。
(おじさん、ホントにここが好きなんですね。)
「…まだ桜は咲かないけれど…きっと優しい、笑顔のような花を咲かせてくれるんですね。」
(だって……)
「あぁ。きっとそうじゃな。」
おじさんも、雫もにこやか微笑んでいた。
「まぁ何はともあれよろしくなぁ、りっちゃん。」
「?…りっちゃん…ですか?」
里香は目を丸くした。
「なんじゃ、あだ名じゃよ、あ・だ・名。…この町のこの商店街のもんはみぃんなフレンドリーなんじゃ。気軽に来ると良い。」
おじさんは笑顔だった。
「はい!!」
里香もつられて笑顔だった。
(だって…こんなにも笑顔が多い町だもん…ね。)
……………
その後、里香と雫はコンビニ、スーパーなどをまわり、1日を終えた。
(ム…ムムム………お料理本…買ったけど……今日はインスタントで…^^)
(こんなのんびりな私ですが、まぁぼちぼちガンバります。)
…だそうです。