敷島奈美。都内の私立高校に通う一年生。
取り立てて、嫌がらせされるような特異な性格ではない。
むしろ、明るく誰にも親切で、なにより、誠実をもって何事にもあたる少女だった。
また地味だが、男子の間では密かに「かわいい」との評判も囁かれ、隠れた人気を有する少女だった。
このようにとりたてて欠点がないと、それはそれで「ウザイ」などと陰口を叩くものも出てこよう。
直接的な物理的暴力はない。だから表面ではイジメはない、なんていうように見える。
しかし、精神的に追い詰めるイジメをやられ、しかも相手がわからないとなると、やられた方はボロボロだ。
奈美はクラスの誰とも仲良く喋りあっていた。
そして誰もが奈美に、屈託なく冗談を言う。
表面では。
アドレスを変えてみても、また見知らぬメールがはいる。
「昨日のあの歌番組出てたあのアイドル、ホント馬鹿っぽいよね。 画面見ててウザイから、マジ死ねってかんじ。そいつのファンで、もしテレビ見てるヤツがいたら、そいつもマジ死ね だよね」
奈美は息を呑んだ。
昨夜見た番組について、なぜ見知らぬものが知っているのか?