5-? 初秋の桜
純の容態が急変したのは筆の一件の3日後の事だった。
ー ついに,
この時が来たか‥
純は1人,病と戦っている。
『粋乃さん‥』
純は病にうなされながら粋乃の名を呼んだ。
ー やはり,
純にとって粋乃さんは大きな存在だったのか‥。
純と粋乃がもう会わない事になっているのは知っている。
しかし,京太郎は粋乃を呼びに既に家を飛び出していた。
『粋乃さん純が危険だ!
来てくれないか!?』
京太郎は粋乃の家前で叫んだ。
粋乃はすぐそれに気付き顔を出した。
『純さんが‥!?』
『病にうなされながらあなたの名を呼んでいる。急いで来てくれ!!』
京太郎は粋乃の手を強引に引っ張った。しかし粋乃はそれを拒んだ。
『でも‥私達はもう会わないと‥。』
『粋乃さん,考えてみて下さい!!
それが,あいつの本心だと思いますか?』
粋乃は立ち止まり考え,やがて覚悟を決めたように顔を上げた。
『私,行きます。』
純を永遠に失う現実を受け入れながら,
粋乃は走った。涙が既に溢れ出している。
†
純の元へは
すぐに着いた。
粋乃は涙を拭き,
恐る恐る部屋へ入る。
純の病に蝕まれた小さな体が横たわっているのが見えた。
『純さん?』
粋乃は純の側に座り名を呼んだ。
○●続く●○