第二十三区間駅
「それにしても遅すぎるよ、ねぇ、フォルちゃんはどう思うの?」
少女は次にフォルド方を向きながら聞いてみる。しかし、フォルドの返答はというといたってシンプルな物となる。
「知らん」
彼の言葉によって一瞬の内に辺りが凍ったかのように静まり返った。あまりの静けさに弱く吹いているはずの風の音すら聞こえてくる。
嫌な空気が充満する。
男たちどころか遠巻きに見ていた連中すら極寒に引き込むような静けさ。
そんな中でいきなり響き渡ったのは
パンッ
銃声であり、同時に声がする。
「フォルド、お嬢様に何て口を利いているのですか?」
「・・・メアニス・・・ウザイ」
銃を誰もいない方向へ向けているのは声の主であり、先程少女と話していたスキンヘッドの男であり、メアニスと呼ばれた男であった。
「ウザイとはなんです?わざわざ私が貴方のその態度を直して差し上げるというのに・・・」
「二度言わすな、ウザイ」
フォルドは眉間に若干のシワを寄せる。
それと同時に
パンッ
再度発砲。今度の弾は彼の右耳のすぐそばを通過した。
「・・・うるさい」
「もう一度撃ちましょうか?」
メアニスの目には一切偽りが無い。だからこそもし撃たれたらと考えてしまう周りの仲間たちも彼を止めようとしない。
この状況に我慢できず、少女は少し頬を膨らませながら二人に告げた。
「もう、フォルちゃんもメアちゃんも暴れないでよ」
不思議なことに、少女がそういうとメアニスはすぐに銃をしまい、少女に向けて恭しく頭を下げた。
「申し訳ございませんニアロ様」
「・・・すまない」
お互いの顔を見て謝ることはしないが、代わりにニアロと呼ばれた少女へ謝罪の言葉をかける。
「分かればよろしい」
ニアロは満面の笑みを浮かべながら優しく言った。その会話を仲間たちも聞きホッと胸を撫で下ろし、周りにいた人間たちもようやく落ち着くことができた。
さらに良いタイミングで
ポォーーーーーー
と到着を告げる汽笛が聞こえた。