「すいません。雑誌の広告をみたのですが。バイトしたいのですが。」「あっ、はい。初めてです。経験ありません。」
「明日18時に、お店に、面接に伺えばいいのですね」「あっ、はい。田中と言います。宜しくお願いします」
慌てて携帯を切った。
…電話してしまった。とうとう…。
電話を切って、しばらくの間、ドキドキが治まらなかったのを今でも覚えている。
これで、全て解決出来る。
子供にも、親としての、責任が取れるわ。
これを機会に、変われるわ。
少しの間だけ。
ホンの、少しの間の事だわ。
そうやって、なんども、自分に言い聞かせた。
自分を、奮い立たせる為に。
「何で、この仕事したいの?」
「借金しちゃった?甘くないよ。この仕事。」
店の店長らしき、今時、珍しいニグロパーマの面接した人が言った。
「経験、ないんだろぉ。大丈夫かい?」
「はっ、はい。頑張ってみます」
足が、ガクガクと震えた。
「じゃ。女の子。待たせてあるから。全部、教えて貰ってね。」
インターホンを鳴らし、何か言っている。
すぐ、エレベーターから、長い髪のスタイルの良い女性が現れた。
「この子だから。宜しく。」
パンチパーマが、長い髪のスタイルの良い女性に言った。
「いらっしゃいませ。欄です。宜しくね」
そう言いながら、ニコリと見せた笑顔は、とても高貴な美しさを持つ笑顔だった。