「お久しぶりです、リズ」声をかけられても、リズはまだ闇を凝視していた。声は辺りに響くだけで、不思議とどこから発せられているのかさっぱり判断がつかない。リズは冷たく、存在の読めない者に言った。
「…仮に知り合いだったとして、よ?姿を見せず、声のみの相手に久しぶりと挨拶をするほど、私は無防備な馬鹿じゃないわ」
そこで言葉を切って、声の主の出方を待つ。しばし待っても返事が来ないので、彼女は寝ていた木の下を片付け始めた。
「お休みになられないのですか?この道は険しい。充分な休息と食事は摂っておくベきと思いますが…」