尚ちゃんに出逢うまで…
人並みに恋もして、付き合ったりもした。
なのに不思議ね、尚ちゃんは私に沢山の初めてを教えてくれた。
愛しい様な切ない気持ちを教えてくれたのも尚ちゃんだったよ。
帰り道、空を見上げ月に想った…
あの優しさ痛くなるな…
月は何も応えてはくれないんだけど、包んでくれる優しさを感じた。
次にバイト先で尚ちゃんを見かけるとなんだかしんどそうだった。
「こないだはありがとう」
「おん」
顔の表情が変わらない。
私はとっさに尚ちゃんの額を触った。
すごい熱だった。
「なんで…」
私の言葉をさえぎって
「誰にも言うなよ、今日忙しいから」
そう言って私の前からいなくなった。
あれだけの高熱、相当しんどいはずだ。
周りはなぜ気付かないんだろう?
私はカバンの中に入っていた解熱剤をとりだし、尚ちゃんのロッカーに入れた。
私は尚ちゃんとの約束通り誰にも何も言わなかった。
バイトが終わり帰ろうとすると休憩室の喫煙ルームに友達と笑っている尚ちゃんを見つけた。
良かった…薬効いたみたい。
私は尚ちゃんに声をかけずにバイト先を後にした。
しばらくするとバイト先の友達から電話がかかってきた。