どのくらい、そうしてただろうか。少女は靴を脱ぎ、再び、フェンスを登り始めた。
少女の服装は、明らかにおかしかった。
いつ雪が降ってもおかしくないような季節なのに、薄いワンピースを一枚着ているだけだった。
フェンスをこえると、ベランダに雨が、かからないようにするための、コンクリートの、少しだけ出っ張った所に足を着いた。
恐る恐る下を向く。
学校の屋上とはいえ、人、一人を壊すには十分な高さがあった。
さすがの少女も少しためらったが、目をつむり、意を決したのか、そのまま重力に身を任せようとした。
その時、突然横から声がした。その声はどこか頼りなかったが、強い意志を感じさせた。
「自殺なんて、やめた方がいいですよ。」
続く