尚ちゃんの携帯の着信音だけ、みんなとは違うのにしていた。
音がなるほんの数秒が嬉しくて…
今は聞こえないあのメロディーが今もなお、私の心をふるわせる。
表示された携帯画面の友達の名前に油断して出た。
「お疲れ」
…尚ちゃんだった。
面食らって声がでない。
「桃ちゃん?」
尚ちゃんが私の名前を呼んだ。
「名前…知ってるんだ」
「なんだ聞こえてるんじゃん。名前ぐらい知ってる」
尚ちゃんはいつもみたいに明るい声だった。
「熱、下がって良かった」
「ありがとな、…薬」
「どうして?」
知ってるんだろう…
「携帯知らなくて」
「いや、そっちじゃなくて」なんだか私一人パニッてるのがわらけてきた。
「ん?」
なんだかどうでもいいや。
「携帯、教えて」
「おん、これから送るわ」
「うん」
私がそういうと携帯の持ち主に変わられた。
「ごめん、驚いたよな?こいつうるさくて」
「いえ」
「じゃ、またな」
そう言って電話が切れ、尚ちゃんの携帯番号とメールアドレスが送られてきた。
なんだか変な遠回りをして私達は少し近づけた気がした。
教えてもらったアドレスに早速メールしてみた。
作っては消して…
作っては消してを繰り返していた。