友列車(上)
ガタン…ゴトン…
…電車の音は嫌いだ。
あれを思い出してしまう…
一緒に遊び、一緒に笑い、一緒に歩んだ。
中学で出会い、高校を僕らは同じ道を選んだ。というより、このへんの田舎にはそう多くの学校はなかったから別の道が無かった。
口べたな僕には友だちがいなかった。小学生の時は虐められた経験もある。
そいつは陽気に話しかけてきた。その頃の僕はとにかく静かな環境を望んでいた。僕にとってそいつは空気の読めない奴だった。
空気の読めないそいつは正直、周りからの評判が悪く、友だちがいなかった。
でも、嬉しかった。
同じ境遇にあるそいつに話しかけられたこと。
それは僕の中の安息を求める声が本心じゃないことを気づかせてくれた。
僕らは学校では完全に孤立した2人組だった。僕はそれでも良かった。
「初めての友だち」
それは僕の中では今までの何よりも代え難い存在だったから。
高校三年の秋、将来の目標のない僕にそいつは地元の大学を共に入ることを進めてきた。
三流大学だったけど、どこに行きたいとかもなかった。僕らは唯一の友と同じ道をまた歩むことになる。
…はずだった。
「東京ってさ、人多いよな。あっちの方ならオレらもっと友達できっかもよ?」
「…?」
また調子に乗ってるかと思って聞いていた。しかし、その発言から日を増す毎に、東京の話が頻繁に出るようになった。
日に日に孤独を想像するようになった。
後日僕はこんな質問をした。
「僕とお前って、友達だよな?」
そいつは目を丸くした。そして
「はぁ?バリバリばりっちょ友達じゃーん!」
と答えた。いつも通りに調子に乗っていた。
少しホッとしたような…でも僕はこんな会話を少しずつ嫌って行った。
楽しく……ない……
東京の話は次第に僕を不快にさせていく………
今日も…
また今日も…
またか。そんなに東京が大事なら東京に行きゃいいじゃないか…
また出たよ…もうウザい…
「えっ?」
そいつは驚いた顔をしていた。
!…あ…。知らず知らずのうちに言葉に出していた。
一瞬両者に沈黙が訪れた。
「あ…東京…嫌いだった?」
…ッ!」
…そ…そんな事じゃ…ない……そんな事じゃない…そんな… 「そんな事じゃないだろ!!!!!」
教室内が しん… とする。
再び沈黙が訪れた。
それ以来東京について話すことはなくなった。その上仲も微妙になってしまった……