友列車(下)
…本当の友だちって何だろう?
時は過ぎて2月。約束の大学の受験日がきた。しかしあいつはこなかった。
あれ以来東京の話はしなくなったが友だちとしての仲はだいぶ直っていた。……なのに…
(あいつ…もうすぐ試験始まるぞ?話持ちかけた張本人が……!)
ふと僕の脳裏にあいつが電車に乗る姿が映った。大荷物を抱えて。
…まさか…?
僕は試験会場を飛び出した。あいつまさか…東京…に……今すぐ…行かなきゃダメだ!!!
ダッ!
理由不明確でもとにかく駅へ走りだした僕。
ふと思った。「本当の友だちって何だろう?」
タッ!タッ!タッ!タッ!
周りが見えない…空気が凄いスピードですり抜けていく…これが……
駅が近くなる。
発車ベルが聞こえてくる。
その電車にそいつが乗ってるとは限らない。むしろその確率の方が低い。…でもとにかく走った。
プシュゥー…
ヤバい!間に合わない!急がないと!
ガタ…ゴト…
ゆっくり電車が走り出す。
ダンッ!
改札を勢いに任せて飛び越える。
「あ、あぁ!ちょっと!キミ!」
駅員が僕を止めようとする。
電車はぐっと加速をはじめる。
ガタン‥ゴトン‥
「待ちなさい、キミ!」
必死だった。初めてだった。いろいろな初めてがあって頭が整理されていなかった。けれどわかっていたことがあった。
「どけよ!!どけぇえ!」
(アイツは…行ってしまう)
ガタン‥ゴトン、カタン‥コトン、
電車はぐんぐん加速する。
僕は駅員を振り払う。そして叫んだ。
「フザッっけんなよ!ハァ、どこ行くんだよ!お前から誘った…ハァ、約束!ハァ…お前…バリバリ…ちょ…じゃ無……どうして…ハァ…………
‥、カタン。………
はぁ……はぁ…
頭の中、真っ白だった。ただ遠くなるだけの友。僕の唯一の…友。その場には呆然と立つ無気力な僕しかいなかった。
はぁ………はぁ…ぅ…
(…本当の友だちなら…止めるのでなく……見送ってやるべき…かな……)
僕は泣いていた。
やはりあいつは町から居なくなっていた。
もう十数年がたつ。
相変わらずもの寂しい世界が眼前に広がる。
「あいつ…元気にしてるかな?」
今も故郷に帰るとふと出てくる言葉。
…その友を乗せた列車はもう帰ってこない。(終)