卒業式の前の夜、俺は「明日ユキちゃんに話しかけてみよう。それから写真も一緒に撮ってもらおう。」と決心した。
二人の間にかつて付き合っていた期間があった証明にしたかった。
それだけなのに、俺は今なんて言った?
「ちゃんと俺のこと好きだった?」なんて質問をしてしまった。
ユキちゃんは案の定固まっている。困らせてしまった。
俺はもう何も考えられなくて、ただ久しぶりに目の前にいるユキちゃんを見た。
とても長い時間の沈黙を破ったのは意外にもユキちゃんだった。
「…私…ちゃんと…好きだったよ。」
震えた声で今にも泣きだしそうな顔をしている。
「…でもうまく付き合えなかった。自分があんなに臆病で、嫉妬心が強くて弱い人間なんて知らなくて。でもどんどんマサノブ君のこと好きになっていって…こんな自分を知られて嫌われるのが怖かった。…結局フラれちゃったけど…」
ユキちゃんの目には涙が溜まっている。それが流れそうになると制服の袖で顔を隠してしまった。肩を小さくして泣いている。
俺は思わずその小さな肩に手をかけた。ユキちゃんは一瞬ビクッとなった。