昼食を終えて、４人が外へ出ると、隣の６号棟を予約していたらしき、大きな荷物を持った、３人の女性とすれ違った。お互いに軽く会釈をすると、空が大きな声で「こんにちは」と言った。
海人も妙子も驚いたが、一番驚いたのは、その女性たちだった。
その３人は、振り向いて「こんにちは」と、にこやかに挨拶を返して来た。すると、もう一人の女性が、歩いて来た。その姿を見つけて、空が叫んだ！
「先生！」
「えっ、先生？」皆が驚きの声を上げた。
その女性は、空の担任、大空純子だった。
「あら〜、空ちゃんも来てたの？」純子は、海人の方を向き、挨拶をした。
「空ちゃんのお父さんですね。初めまして、大空です」
「あ〜あ〜、どうも矢口です〜」海人は、オドオドしてしまった。
純子は、妙子を見て「あら？お母……？」
すかさず空が「早織ちゃんのお母さんです」と言うと、妙子が口を開いた。
「２年１組の、石原早織の母です」と自己紹介をした。
周りから見ると、両親と２人の子供と言う、家族連れに見える。
父親だけと、母親だけの、片親同士の組み合わせ。誰が見ても、不自然な組み合わせである。
純子たちは、深く追求する事もなく「それでは」と、６号棟へ入って行った。
海人は、『まずいなあ』と思った。母親の富子が、来れなくなって、『参ったなあ』とは思ったが、知っている人と、会うことは無いだろう、と軽く考えていた。ところが、依りに依って、空の担任と会うなんて、想像もしなかった。
それは、妙子も同じ思いだった。
空と早織は、場内の『案内看板』を見て言った。
「お父さん、アスレチックが有るよ。一緒に行こうよ！」
「ああ、そうしようか」
海人と妙子は、子供たちと遊びながらも、純子が気になって、仕方なかった。いっその事、このまま帰りたかった。しかし、そんな事は出来ない。それよりも、誤解の無いように、きちっと、話をしなければ、と思った。
「さあ、そろそろ戻って、バーベキューの用意をしようか？」
その頃、純子たちもバーベキューの用意をしていた。
純子は、大学時代の友人たちと来ていた。
全員が独身なので、話題の中心は、どうしても、恋愛や結婚の話しになる。
純子と、銀行のＯＬ、本田亜希子。病院の医療事務、前野陽子。歯医者の看護士、石井翔子の４人は、海人たちの噂をしていた。
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