もし僕が雨嫌いでも
君は好き。
――――――
僕はいつも町でいちばん高い
丘で絵を描いている。
晴れの日はもちろん
雨の日もね。
雨の日も絵が描けるのは
君のおかげだよ。
君と初めて会った日は
雨が降っていた。
だから君に会えたんだね。
君が傘を持ってきてくれたんだ。
『雨で濡れるよ?』
『え?』
『傘さしててあげる』
そう言った君は僕の隣に
座って僕の絵を見ていた。
『きれいな色だね』
『あ、ありがとう』
『私、この色好き』
『この色、僕のオリジナルだよ
空色って言うんだ』
『水色じゃないの?』
『ちょっと違うかな』
『えぇーどこが?同じじゃん!』
『晴れた日の夕方にまたここに
来て、そうすればわかるよ♪』
『なんで?』
『ひみつ』
僕がそう言ったら
君は右手の小指を出して
『約束だよ』って言った。
ある晴れた日の夕方−
約束どおり君は来た。
おっきなスケッチブックを持って。
『早く教えてよ、空色のこと』
『空見てみなよ、あれも空色』
『オレンジ色じゃん』
『空の色は空色だろ』
君は一瞬戸惑って、納得したように
頷いた。
『なんだぁーそういうことね』
『でも、聞いてくれてありがと
僕の話』
『…いえいえ』
『君は何色が好き?』
『…空色かなぁ』
『ホントに?』
『うん、今好きになった』
『はは…単純だね』
『失礼ね』
こんな会話してたらいつの間にか
空は紺色のような空色に染まっていた。
次の日も君は来た。
おっきなスケッチブックを持って。
『君はなんの絵描くの?』
『1時間後のお楽しみだよ♪』
『まー僕は君を描くけどね』
『えぇっ!?やだ恥ずかしぃよー』
そんな君に構わず僕は
君を描きはじめた。
時々見る君の顔は昨日見た夕日のように
紅く染まっていた。