Monstars Da-Capo?

キリン  2006-07-06投稿
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シヴァもあまりの恐ろしさに震えていた。
久しぶりに見たが、相変わらずなんて醜い容姿の女だろう。
襲われることなどありえないが、ひとりで村の朽ち果てた教会に住み着いていることも奇怪で、怪しげな魔術の研究をしているに違いない、ともっぱらの噂である。
本当に早く死んでしまえばいいのに。
村人の誰かが殺せばそれで済むのだが、誰も魔女の呪いを恐れて手を出せないのだ。
あの女は絶対に村に不幸をもたらす。
近頃、ついに村長が首都・ミリアムにある王宮騎士団に討伐を依頼した。
あんな女よりはまだ自分の方がよっぽどましだ。
シヴァはふと、自分が今、畑の手伝いの途中だったことに気がついた。
早く戻らないと、痩せこけてはいても牛馬の手綱を取るのは年老いた父には辛いはず。
慌てて駆け出していく背中には、無知の残酷さだけがあったのだった。

「――また、やっちゃった……」
魔女――ウー・ラシルは大きく溜息をついて薬草かごを背負いなおした。
村のことに口を出しても、どうせまた気味悪がられるだけなのに。
だが、ついついそうせずにはいられない。
性分なのだろうか。
だとしたら損だと思う。
村落を抜けるとそこからはアルザの森だ。
アルザの森は良質な薬草の宝庫だが、ロンラート王国との国境線にぐっと近くなるため、村人はほとんど近づかぬ。
一週間ぶりに足を踏み入れた森は、いつものようにウーに優しかった。

化け物と。
この容姿のせいで昔から色々言われるのは慣れている。
喉の痛みに効く飴と解熱とできものの薬に必要な薬草を探しながら、ウーはどんどん森の奥にわけいっていく。
ひとり暮らしにも慣れていて、むしろいつも殺気を向けられるくらいならひとりの方がよほど気が休まる。
けれど、とウーは、薬草を引き抜いた。

「時々は、寂しい……」

荒い息遣いと足音が聞こえたのはその時だった。



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