本田亜希子が純子に聞いた。
「ねえ純子。さっきの家族って、どう言う関係？」
「関係迄は知らないけど、あの空ちゃんって子の、お母さんはいないのよ。去年、交通事故で亡くなったんだって。石原さんとは、子供同士も、親同士も、親しい友達なんでしょう、きっと」
「そうなの？でもあの子、賢そうだね！突然大きな声で『こんにちは』なんて、ビックリしちゃった！」前野陽子が言った。
「そうなの！いつも元気一杯なの。寂しそうな顔を、全然見せないし、クラスでも人気者なんだよ」
「あのお父さんって、何歳位？」今度は、石井翔子が聞いた。
「私たちと同じだよ」
「そうかあ、普通に結婚していれば、もう小学生の子供がいても、不思議じゃないんだね、私たちにも！」亜希子がシミジミと言うと、誰もが頷いた。
純子たちがお喋りをしていると、海人たちが、戻って来た。少し離れているとは言え、お互いの庭は、丸見えである。
海人は、彼女たちの視線が、気にならない訳ではないが、子供たちを楽しませなければと思い、開き直って、バーベキューの準備を始めた。
「海人さん、はいビール」妙子がビールを出して、海人に渡し、自分も口を開けて飲み始めた。
海人は、釜戸に炭を並べ、焚き付けに火を着けた。そして子供たちが、うちわで扇ぎ出しすと、白い煙が登り始めた。
「さあ、炭が興てきたから、焼くぞ！」海人は、肉や野菜、イカやホタテを網の上に載せた。
「わあ〜、良い匂い！」空と早織は、箸と皿を手に持ち、焼けるのを待っていた。
妙子は、コテージの中で、おにぎりを握っていた。
妙子は、到着して直ぐに米をとぎ、ご飯を炊く準備して、炊飯器のスイッチを入れておいたのだ。
海人は『さすが主婦のやることは、手際が良いなあ』と感心した。間もなく、熱々のおにぎりを持って、妙子が出て来た。
「わあっ、まだ湯気が出てるよ！お母さん、いつの間に用意したの？」早織が言うと、空も言った。
「おばちゃんのおにぎり、美味しいんだよね。頂きま〜す」
海人は思い出したように言った。
「そう言えば、運動会の時も、おばちゃんのお弁当だったな！」と、海人もおにぎりを手に取り、食べ始めた。
「さあ、ドンドン食べろよ。沢山有るからな！」海人はそう言うと、焼けた肉や野菜を、３人の皿に取り分けた。
気が付くと辺りは、真っ暗になっていた。
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